愚痴・憎まれ口・無駄口・世迷言・独断と偏見・屁理屈・その他言いたい放題



その3.≪ガングロ・ヤマンバ様御用達の振袖



日の発表会で、若い人達に振袖を着せて踊らせました。後からお客
様の1人に感想を聞いたところ、踊りの感想とは別に、「ショート・
ヘアーの人には、振袖は似合いませんネ」と言われました。実はその
ショート・ヘアーは僕の娘で、今流行の肩に触れるか触れないかと言
うくらいの長さです。他の出演者達はもう少し長かったので、美容師
さんに結い上げて貰ってました。確かにそのお客様が言われた通り、
結い上げた方が様になっています。でも最近テレビに出てくる若い女
優さんやアイドル達は、結構ショート・ヘアーの人が多いし、その人
達がお正月に振袖を着て出て来ても、別に不似合いではありませんで
した。多分、娘の着こなしが悪かったせいもあるのでしょうが、なん
だか聞き流せないものが、僕の心に残りました。        


年の成人式には、金髪や銀髪に髪を染めた男性の紋服姿や、ガング
ロ・ヤマンバ(おまけにヤンママの人もいたけど)の女性の振袖姿が
テレビで大きく報道されていました。これまでの僕等の常識に当ては
めると、確かに似合わないし可笑しいのですが、それでは彼等が和服
で正装するのがいけない事かと言うと、勿論そんなことはない訳で、
髪を染めようとガングロにしようと、ピアスや派手なマニキュアをし
ていようと、それを咎めることは出来ません。人生の先輩として「こ
ういう場合はこうするもんだヨ」と教えてあげたとしても、その事が
解った上で、「でも、こっちのほうがかっこいいジャン!」と言われ
てしまえば、これはもう美意識の違いとしか言いようがありません。

えてみると、僕等の若い頃は男でもロング・ヘアーが当り前だった
し、今流行っているような厚底のサンダルやブーツ(確かロンドン・
ブーツといってましたネ)にベル・ボトムのジーンズと言う格好で町
を歩いていたものです。当然ロング・ヘアーのままの紋服姿で成人式
に出席して、ヒンシュクを買った者もかなりいましたが、結局僕等は
そんな批判には耳を貸しませんでした。「ファッション・センスに関
して、ドブ鼠の大人達からガタガタ言われたくない!」という、若者
の自負があったのだと思います。               


こまで読んで「それなら何でも、若い者に合わせろって言うのか!
伝統的な慣習はどうでもいいのか!」と怒ってる方もいらっしゃるで
しょうが、決してそんな事を言っている訳ではありません。ただ「時
間の流れには、竿はさせない」という事を、言いたいだけです。そし
て現在、僕等が伝統的なものだと信じている事も、常にその時代時代
の若者達によって、打ち破られながら再構築されて来たものだという
事を、一度冷静に考えてみるべきだと思うのです。着物ひとつとって
見ても、平安時代の着物と、江戸時代の着物と、現代の着物では、か
なり違ってきていますし、他の伝統文化についても、大なり小なり同
じことが言えると思うのです。                


道では、洋花を伝統的なテクニックで、いかに洋間にもマッチする
ように活けることが出来るかが、大切な課題になってるようですし、
陶器や漆器の世界でも、伝統技法を生かした斬新な作品が、海外でも
おおきく評価されています。こんな事を言うと又叱られそうですが、
和室が1つも無い住宅が増えているのですから、洋間用の茶道のお手
前が考案されてもいいのではないでしょうか。それも、略式のポット
手前などではなく、100%洋間と洋風の庭を使って、本格的な茶事
をやるための作法です。やっぱり叱られそうだし、僕個人としては、
どうせお茶を頂くのなら今まで通りの茶室の方が好きですが、日常生
活の中で、自然にお抹茶を楽しむ習慣を広めようと思ったら、やはり
ある程度思い切った変革が必要になってくると思うのです。   


は先日の発表会で、敢えて洋服で踊りました。皆さん驚かれていた
ようですし、僕も好きこのんで洋服で踊った訳ではありません。でも
どうして、洋服で踊ってはいけないのでしょうか。どうして三味線を
使った純邦楽でしか踊ってはいけないのでしょうか。日本舞踊を踊る
人も観る人も、何の疑いも無く当り前だと思っている事に、もう一度
疑問を持って欲しかったのです。「21世紀に相応しい日本舞踊」と
はなにか、一般の人達に、ポップスのライブを楽しんだり、ミュージ
カルを観に行ったりするのと同じ感覚で、生活の中の一部として日本
舞踊を楽しんで貰う為には、一体どうすればいいのか・・・。考えな
ければならない事は山ほどあるように思います。        


年の夏、テレビで「浴衣美人コンテスト」をやってました。どこか
のビーチに舞台を作って、泳いだりサーフィンをしたりしている若者
達が審査員でした。結果1位に選ばれた女性は、浴衣をミニ・スカー
トのように短く着て、帯は前でリボンのように結び、ナント邪魔な袂
は後ろで縛ってありました。この話を門弟達にした所、僕よりズッと
若い人でも、眉をひそめました。でも僕は、あまり大きな声では言え
ませんが、内心「カッコいい!」と思ったのです。若い人達が着物を
着なくなるのと、着方は洋服感覚でも楽しんで着てくれるのと、どっ
ちがいいとお思いになりますか?呉服屋さん!ガングロ・ヤマンバや
ショート・ヘアーの女性に、素敵にマッチするデザインの振袖を考え
てみては如何?!                      




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